那覇地方裁判所 昭和57年(行ウ)1号 判決
沖縄県中頭郡中城村字泊一一一番地
原告
比嘉篤信
右訴訟代理人弁護士
照屋寛徳
沖縄県沖縄市字美里一二三五番地
被告
沖縄税務署長
城間俊一
右指定代理人
布村重成
右同
林田慧
右同
町田宗伴
右同
宮平進
右同
仲村渠文孝
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が昭和五四年三月七日原告の昭和四八年分所得税についてした決定及び重加算税賦課決定をいずれも取り消せ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二当事者の主張
一 請求原因
1 被告は、原告の昭和四八年分所得税について、納税申告書の提出がなかつたので、昭和五四年三月七日総所得金額を二〇五〇円、納付すべき税額を八四九万一六〇〇円とする決定処分及び重過算税の税額を二九七万一八〇〇円とする賦課決定処分をした(以下右各処分を一括して「本件処分」という。)。
2 原告は、本件処分を不服として、昭和五四年五月四日被告に対する異議申立てをしたが、被告は同年九月一七日右異議申立てを棄却する決定をした。
3 原告は、右決定後も本件処分に不服があるとして、昭和五四年一〇月一七日国税不服審判長に対して審査請求をしたが、同所長は、昭和五七年一月三〇日右審査請求を棄却する決定をした。
4 しかしながら、被告の認定した原告の昭和四八年分の総所得二〇五〇万円のうち二〇〇〇万円は、原告が、比嘉忠(以下「徳忠」という。)から丸忠産業株式会社(以下「丸忠産業」という。)の設立準備資金として預つた金員であり、原告の所得ではないから、本件処分は、原告の所得を二〇〇〇万円過大に認定した違法がある。
よつて、本件処分の取消しを求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因第1ないし第3の事実は認める。
2 同第4の事実は争う。
三 抗弁
被告のした本件処分は、以下のとおり適法である。
1 総所得金額及び税額決定処分の適法性
被告は、合資会社リネンサプライ沖縄(以下「リネンサプライ沖縄」という。)の代表社員である徳忠から同社の営業譲渡契約に関する受取手数料として昭和四八年二月二六日に五〇万円、同年三月五日に五〇〇万円及び同月二一日に一五〇〇万円の合計二〇五〇万円を受領した。
被告は、右二〇五〇万円を原告の雑所得とし、昭和四八年分の総所得を二〇五〇万円と認定して、本件処分のうち原告に対する決定処分をした。
原告は、二〇五〇万円を収受したこと及び右金員のうち二月二六日に受領した五〇万円については自らの雑所得であることを認めて争わないところ、その余の二〇〇〇万円(以下「本件金員」という。)は、次のとおり原告の雑所得と認定することができるから、被告がした本件処分のうち原告に対する決定処分は適法になされたものである。
(一)(1) 原告は、昭和四六年三月ころから同四八年三月ころまでの間リネンサプライ沖縄に勤務し、専務の地位にあつたところ、同社の代表社員であつた徳忠とともに、昭和四七年六月ころ経営不振であつた同社の営業全部を綿久寝具株式会社(以下「綿久寝具」という。)に譲渡すべく、同社と交渉を始めた。その後、いつたんは中断したものの、徳忠は、昭和四八年一、二月ころ再びリネンサプライ沖縄の営業全部を綿久寝具に対して譲渡する方針を決め、綿久寝具との交渉を高江州義一(以下「高江州」という。)に一任し、同人の交渉の結果、昭和四八年二月綿久寝具との間でリネンサプライ沖縄の営業全部を二億四〇〇〇万円で譲渡する旨の合意に達した。
(2) しかしながら、原告、徳忠及び高江州は、リネンサプライ沖縄の営業譲渡代金二億四〇〇〇万円から譲渡時における負債額一億四〇〇〇万円を控除した残りの一億円について、徳忠と高江州に各四〇〇〇万円、原告に二〇〇〇万円をそれぜれ配分すること及び右金員の配分を秘匿するための税金対策として営業譲渡に関する仮装譲渡契約書を作成することを合意し、綿久寝具との間で原告の関与のもとに、右営業譲渡に関し、営業譲渡代金が二億四〇〇〇万円の契約書と営業譲渡代金が一億四〇〇〇万円の仮装契約書を作成した。
(二) 徳忠は、前記営業譲渡益の配分約束に基づいて、綿久寝具からコザ信用金庫センター出張所の高江州名義の口座に振り込まれた営業譲渡代金のなかから、昭和四八年三月二日額面五〇〇万円の右信用金庫の自己宛小切手の振出しを受け、これを同月五日に原告に交付し、さらに、同月三一日にも額面一五〇〇万円の自己宛小切手の振出しを受けて同日原告に交付した。
原告は、右交付を受けた日に、各々の小切手に裏書をしたうえ、昭和四五年六月ころに開設されていたコザ信用金庫普天間出張所の原告名義の普通預金口座(以下「本件普通預金口座」という。)に五〇〇万円ずつ二回入金し、残りの一〇〇〇万円は右出張所に原告名義の定期預金として預け入れた(以下「本件定期預金」という。)。
(三) 原告は、徳忠から収受した二〇〇〇万円を次のとおり自己の目的に費消した。
(1) 原告は、昭和四八年三月五日、本件普通預金口座から七五万円の払戻しを受けて、原告の島袋金一に対する個人的債務の弁済に充てた。
(2) 原告は、昭和四八年四月三日、本件普通預金口座から一五〇万円の払戻しを受けて、原告名義の出資金として丸忠産業に払い込んだ。
(3) 原告は、昭和四八年四月三日、本件普通預金口座から二二二万八〇九一円の払戻しを受けて、そのうち二〇〇万円を渡久地保子に小料理店「いと半」の営業資金として貸し付けた。
(4) 原告は、昭和四八年七月二六日、本件定期預金を担保としてコザ信用金庫から七〇〇万円を借り受け、これを支払資金に同信金から額面七〇〇万円の自己宛小切手の振り出しを受けてこれを個人的知人にすぎない比嘉広に交付した。
(5) 原告は、昭和四八年一一月一日、本件普通預金口座から払い戻しを受けた三〇三万七一五〇円のうちの三〇〇万円と、同日本件定期預金を担保にコザ信用金庫から借り受けた二〇〇万円との合計五〇〇万円を支払資金として同金庫から額面五〇〇万円の自己宛小切手の振り出しを受け、これを右渡久地保子に交付した。
2 重加算税の賦課決定処分の適法性
原告は、抗弁第1(一)(2)及び(二)記載のとおりリネンサプライ沖縄の専務として、同社の営業譲渡に係る二重の契約書の作成にかかわつたうえ、これにより捻出した簿外譲渡代金の配分にも関与した。しかるに、原告は、右簿外譲渡代金の一部を徳忠から受領したことを知悉しながら、これを秘匿して、昭和四八年分の確定申告書を期限内に提出しなかつたし、被告の期限後申告のしようように対しても、右金員は徳忠からの預り金である旨虚偽の答弁をしてこれに応じなかつた。これらのことは、国税の課税標準である所得税の総所得金額及び国税の税額の計算の基礎となるべき事実の全部を隠ぺいし、その隠ぺいしたところに基づき納税申告書を提出しなかつたもので、国税通則法六八条二項に該当する。
四 抗弁に対する認否及び反論
1 抗弁第1冒頭の事実のうち、原告が徳忠から五〇万円を受取手数料として受領し、右五〇万円が原告の所得であることは認め、その余の事実は否認する。
原告は、徳忠から二〇〇〇万円を受領したことはあるが、これは丸忠産業の設立準備のため徳忠に依頼されて預つた預り金であり、原告の雑所得とはならない。
原告が徳忠から二〇〇〇万円を預つたのは、原告が徳忠から強く要請されてリネンサプライ沖縄に入社して徳忠の業務執行を補助してきたという経緯から、徳忠が同社の営業譲渡により原告が失業することに責任を感じ、丸忠産業を設立して、原告をこれに参加させる運びにし、二〇〇〇万円はそのための資金とするため、他と区別して原告に管理させるのがふさわしいと考え、預り方を求められたからにほかならない。もとより、右二〇〇〇万円が原告の所得とならないことは、原告がリネンサプライ沖縄に出資もしていないし、登記上も社員となつていないから同社の残余財産の分配を受ける権利を有していないことからも明らかである。
2 同第1(一)の事実について
(一) (1)の事実のうち、原告が営業譲渡の方針決定に関与したとの点は否認し、その余の事実は認める。
(二) (2)の事実のうち、原告が、徳忠の指示により、一億四〇〇〇万円の仮装契約書にリネンサプライ沖縄の代表者印を押捺したことは認め、その余の事実は否認する。
3 同第1(二)の事実のうち、原告名義で、本件普通預金口座及び本件定期預金に合計二〇〇〇万円が入金されていること及び、原告が三月五日に五〇〇万円の小切手の交付を受け裏書のうえ本件普通預金口座に入金したことは認め、その余の事実は否認する。
4 同第1(三)の事実のうち、(1)ないし(3)の事実及び(4)の事実のうち本件定期預金を担保としてコザ信用金庫から七〇〇万円を借り入れたことは認め、(5)の事実は否認する。
本件定期預金を担保にコザ信用金庫から借り入れた七〇〇万円は、丸忠産業の仕入資金として同社の営業担当取締役に就任予定の斉藤陽(以下「斉藤」という。)に渡したものである。
5 同第2の事実は否認する。
原告は、課税を免れる目的での仮装の営業譲渡契約書の作成及び簿外譲渡代金の配分について全く関与してない。
第三証拠
証拠関係は、本件記録中の書証目録、証人等目録記載のとおりであるからこれを引用する。
理由
一 請求原因第1項の事実については、当事者間に争いがない。
二 被告が、原告の昭和四八年分の雑所得として認定した二〇五〇万円のうち五〇万円が原告の雑所得であることは、当事者間に争いがない。
更に、右争いのない五〇万円を除いた二〇〇〇万円が、原告名義の本件普通預金口座及び本件定期預金に各一〇〇〇万円預金されていることは、当事者間に争いがない。
従つて、右二〇〇〇万円が、原告の雑所得と認定することができるかどうかにつき検討する。
三 証人高江州義一、同安里牧夫、同平良道及び山口正道の各証言、原告本人尋問の結果、成立に争いのない甲第一ないし第三号証、乙第二、第七、第一〇号証、原本の存在及びその成立につき争いのない乙第一三号証の一、二、第一四号証、第一五号証の二、第二二号証、第二三号証、弁論の全趣旨により真正に成力したものと認められる乙第一五号証の一、弁論の全趣旨により原本の存在及び真正に成立したこと(原告作成部分は除く。)の認められる乙第一一号証、第一七号証の一、二、証人山口正道の証言により真正に成立したものと認められる乙第一六号証、証人高江州義一の証言により真正に成立したものと認められる乙六号証の一、原告の作成部分については争いがなく、その余の作成部分については証人山口正道の証言により真正に成立したものと認められる乙第六号証の二、証人山口正道の証言により原本の存在及び山口正道、リネンサプライ沖縄及び綿久寝具の作成部分が真正に成立したものと認められ、原告の作成部分については、原告本人尋問の結果により原告本人名下の印影が原告の印章によるものであることが認められ、右の印影は原告の意思に基づいて顕出されたものと推定されるので真正に成立したものと推定される乙第八号証によれば以下の各事実が認められ、これらに反する原告本人の供述部分は採用できない。
1 リネンサプライ沖縄の営業譲渡に至る経緯
(一) 原告は、かねてからの友人であるリネンサプライ沖縄の代表社員であつた徳忠からの懇請により、昭和四六年三月ころから、資金面の援助はしないこと及び同社に持分を有する社員として入社しないという約束のもとに、同社において専務として、徳忠の業務執行を補佐していた。
(二) リネンサプライ沖縄は、タオル、寝具、衣類等を洗浄のうえ、病院、ホテル等に貸与することを業としていたところ、昭和四七年当時の沖縄において、本土の資本系列下にあを数社と競業関係にあつたが、各社とも、沖縄で開催される海洋博覧会に向けて、大手ホテル等への激しい進出競争を展開していた。リネンサプライ沖縄は、他社に比較して市場占有率は高かつたものの、資金力に欠け、先行投資として大量のタオル、寝具、衣類等を購入すべきところ、その資金に窺する状態にあつた。
(三) 徳忠は、昭和四七年七月ころ、リネンサプライ沖縄が資金繰りに窮していたため、同社の営業全部を本土資本の綿久寝具に譲渡することを検討し、原告を同行して交渉のため京都の綿久寝具本社に赴いた。しかしながら、綿久寝具から示された買入価格が、リネンサプライ沖縄の負債額にも満たなかつたうえ、これを知つた高江州から資金援助の申込みがなされたので、綿久寝具との交渉を打ち切り、高江州から資金援助を受け、同人の強い発言力の下でリネンサプライ沖縄の営業を継続した。
(四) その結果、リネンサプライ沖縄の営業は一時好転したが、やがて綿久寝具系列のホワイトリネンサービスから激しい顧客獲得のための攻勢を仕掛けられ、徳忠は、資金力の差から将来的にも同社に太刀打ち出来ないと判断し、高江州も援助した資金の一部を知人から借り入れていたこともあり、投下資本の確実な回収を望んだため、原告とも相談のうえ、昭和四八年一月末ころには、リネンサプライ沖縄の営業全部を、綿久寝具に譲渡することを決定した。
(五) 高江州は、右決定に基づきリネンサプライ沖縄の営業譲渡のための交渉を一任され、昭和四八年二月八日綿久寝具との間で、リネンサプライ沖縄の営業全部を代金二億四〇〇〇万円で譲渡する旨の営業譲渡契約を締結した(乙第六号証の一)。その後、徳忠は、綿久寝具から右営業譲渡契約が高江州との間でなされたものであつたため、リネンサプライ沖縄の代表社員である徳忠との間で改めて営業譲渡契約を締結したい旨の要請を受け、他方において、税務対策のため高江州及び原告と協議のうえ、綿久寝具に対し営業譲渡代金を一億四〇〇〇万円とする仮装の営業譲渡契約書の作成を依頼し、同月二〇日原告を同席させて、綿久寝具との間で、正式の営業譲渡契約を締結する(乙第八号証)とともに、右仮装の営業譲渡契約書(乙第六号証の二)を作成した。
更に、徳忠、高江州及び原告は、リネンサプライ沖縄の営業譲渡代金二億四〇〇〇万円のうち一億四〇〇〇万円を同社の負債の整理にあて、その余の一億円は、右仮装譲渡契約書を利用して簿外資産として処理し、徳忠及び高江州に対して各四〇〇〇万円、原告に対して二〇〇〇万円宛配分することを合意した。
2 原告の二〇〇〇万円の収受とその使途
(一) 綿久寝具からの営業譲渡代金は、リネンサプライ沖縄の債権者から追及を受けるのを防ぐため、コザ信用金庫センター出張所の高江州名義の普通預金口座に、数回に分けて振り込まれた。
徳忠は、右口座から昭和四八年三月二日に額面五〇〇万円のコザ信用金庫の自己宛小切手の振り出しを受け、同月五日にリネンサプライ沖縄において原告に交付したところ、原告は、右小切手に裏書のうえ同人が昭和四五年六月ころに開設し通常の取引に使用していた同人名義の本件普通預金口座に入金した。
更に、徳忠は、高江州名義の前記口座から、同年三月三一日額面一五〇〇万円のコザ信用金庫の自己宛小切手の振り出しか受け、うち五〇〇万円は原告名義の本件普通預金口座に、残りの一〇〇〇万円は原告名義の本件定期預金としていずれも預け入れ、これらを原告が収受した。
(二) 原告が収受した二〇〇〇万円の使途についての抗弁1の(三)の(1)ないし(3)の事実及び(4)のうち昭和四八年七月二六日、本件定期預金を担保に七〇〇万円を借り受けこれを引き出したことについては当事者間に争いがない。
しかしながら、右(4)のうち本件定期預金を担保に借り受けた七〇〇万円についてコザ信用金庫が振り出した自己宛小切手を比嘉廣に交付したこと及び同(5)の事実については、本件全証拠によつて認めるに足りない。
ところで、原告は、その本人尋問において、(1)について、リネンサプライ沖縄の資金として原告が借り入れたものを返済した。(3)について、丸忠産業の営業担当取締役に就任する予定であつた斉藤の内妻である渡久地保子に融資した。(4)について、斉藤の指示により、丸忠産業のために商品の仕入資金として同人に交付した、として、あたかも本件普通預金口座及び本件定期預金の使途は、いずれにしてもリネンサプライ沖縄あるいは丸忠産業のためになされたものであり、純然たる個人的利害でなされたものではないから、二〇〇〇万円は自らの所得にならないかのような供述をしている。
しかしながら、右(1)ないし(4)の使途については、原告の一存で決定され、原告が事前に徳忠から指示を受けたり、事後に徳忠に報告をし、了解を得た形跡はない。原告の主張及び供述そのものからしても、右(1)ないし(3)の使途は、いずれも原告の個人的利害に関するものというほかなく、とりわけ(2)についても、丸忠産業への出資金はこれにより原告が株主としての地位を取得するものであるから、原告の主張する預り金としての性格とは矛盾するというべきである。また、(4)の使途については、仮に、右金員が原告の主張及び供述のように丸忠産業の商品仕入資金として斉藤に交付されたものであるとしても、丸忠産業の会計帳簿上は、納品された品物に見合う金額が原告からの仮受金として記帳されており、徳忠からの仮受金とはされていないこと及び斉藤に交付されたが商品が納入されなかつた金額については、丸忠産業の会計帳簿上は記載がなく、原告宛の二通の借用金確証が提出されていることが認められる。かかる丸忠産業における会計処理は、原告が斉藤個人に対して金員を融資したにすぎないことを示すもので、原告が徳忠からの預り金を丸忠産業のために使つたのであるならそれを会計上秘匿しておくべき特別の事情はなく、原告の主張及び供述は、合理的に説明できるものではない。結局、(1)ないし(4)の使途は、原告の個人的利害のもとになされたと認められる。
3 その他
(一) 簿外資産一億円の分配に関与した徳忠及び高江州は、一貫して二〇〇〇万円は原告への支払手数料として原告個人の所得となる旨を認めており、また、リネンサプライ沖縄の営業譲渡がなされた昭和四八年二年八日の属する同社の昭和四八年六月期に係る法人税の申告書においても、原告に支払われた二〇〇〇万円は原告に対する支払手数料として申告されていることが認められる。
(二) リネンサプライ沖縄の営業譲渡契約によれば、同社の従業員は、綿久妻具に継続して雇用されることが規定されているが、原告については、右営業譲渡により当然退社することとされており、このことは、原告が、他の従業員と異なり、リネンサプライ沖縄において、徳忠ら業務執行を担当してきた者と同等の立場にあつたことの証左であり、原告が同社の持分を有していなかつたとしても、右営業譲渡に伴う差益である簿外資産の分配に預つたことを首肯することができる。
4 以上の各事実を総合考慮すると、原告が収受した二〇〇〇万円は、原告が主張し供述するように徳忠から丸忠産業の会社設立及び運営のために原告が預つた金員であるとはとうてい認め難く、リネンサプライ沖縄の営業譲渡に関する手数料ないしそれまで同社に就労してきたことに対する慰労金として原告に支払われたものと認められるから、原告の所得に帰するものというべきであつて、本件処分のうち原告に対する決定処分は極法になされたものと認められる。
四 重加算税の賦課決定処分について
前掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、原告は、前記仮装の営業譲渡務約書の作成について、徳忠及び高江州と協議のうえ、自ら契約書案を作成し、リネンサプライ沖縄の営業譲渡契約を締結する際に同席し、右仮装営業譲渡契約書に立会人として押印し、被告に対して、収受した二〇〇〇万円は自らの所得でないとして争つてきていることが認められ、これに反する原告本人の供述部分は採用できない。
右事実を前記認定事実と併せて考慮すると、原告は、リネンサプライ沖縄の営業譲渡に伯う差益を簿外資産として仮装することに関与したばかりでなく、右簿外資産の配分により原告の得た所得である二〇〇〇万円についてもこれを仮装隠ぺいしたということができる。
従つて、原告の右行為は、国税通則法六八条二項の規定に該当し、本件処分のうち原告に対する重加算税の賦課決定処分は適法になされたものと認められる。
五 以上のとおり本件処分には何らの違法も認められないので、その取消しを求める原告の本訴請求は理由がないこととなるから、原告の請求を棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 比嘉正幸 裁判官 山口雅高 裁判官 後藤真理子)